little nap COFFEE ROASTERS (富ヶ谷)/グアテマラ「La Rosas」

一般に、ケニアとかエチオピアとか東アフリカのコーヒー豆は標高の高い土地で栽培されていてる。朝夕の寒暖の差が激しい高地では良質の酸が蓄積され易く、東アフリカは豆自体のクオリティが素晴らしい、難しいこといわなくても採ってぱぱっと出荷すればなんとかなる育ちのよいヤツラだ。

中米は標高がちょっと低くハンデがある。その分、精製とか発酵プロセスを研究し味のバラエティを増やして付加価値で勝負している。コスタリカなんか凝りに凝りまくってて、農場ごとに独自の精製所があったり、ハニープロセスをレッドハニーやらイエローハニーやらに細分化したり、そのこだわりは研究者のそれのようだ。

さあ諸君、今日は中米、グアテマラへ行こうじゃないか。といっても私のグアテマラは渋谷区富ヶ谷にある。2年前にカフェコーナーを併設したリトルナップの焙煎所にある。いまじゃサードウェーブ大激戦区となった、神山町、代々木八幡、その中でも最も西側、山手通りも越えた井の頭通り沿い、なかなか自転車じゃないと行きづらい、そんな場所にある。

そんな場所へは、私が開発した「最も登坂の少ないコース」を通って行こうじゃないか。おじさんは坂が嫌いなんである。

「坂嫌い」とかけまして、「鵜匠」と解きます。その心は?
川を見れば迂回(鵜飼)するでしょう。

まず、善福寺川を渡らずに東へ走り、神田川と合流させてからこっそり渡り、水道道路はトンネルをくぐってスルー、小田急線は大人しく踏切が開くまで待つ。東京坂避けマップって地図本が出せそうだが、実際ラクだ。

「おはようございま~す、グアテマラくださ~い!」

30分近くかかって今日も無事到着。

little nap COFFEE ROASTERS
最寄駅/小田急線代々木八幡駅徒歩5分
所在地/渋谷区富ヶ谷2丁目2−43−15
電話/03-5738-8045
営業日/09:00~19:00 無休
価格/ドリップ430円 アメリカーノ430円
焙煎/自家焙煎
トイレ/ウォシュレット有 清潔 店内奥なので借りやすいかも
BGM/アナログレコード中心、フォークジャズからソウル、ヒップホップまで、いちいち最高のセレクション、最高の音質
駐輪場/無いが店前の舗道がひろくガードレールにくっつけて5〜6台は置ける
http://www.littlenap.jp/

ブラジルやエチオピアとならんで、Little Nap Coaffee RoastersのレギュラーメニューのひとつであるグアテマラLa Rosasはそれほど浅煎りいうわけではない。味は濃い。酸味と苦味がうまく混じり合いながら消えていくときの味わいが素敵だ。熟しきった洋梨などにある旨味の感じといったらいいのかもしれない。ご損はおかけしない、騙されたと思って飲んで確かめていただきたい。 私は初めて飲んだときからこの味にやられた。

もともと少し交通の便が悪い土地柄も相俟って

「おはよう!」「ひさしぶり~!」

って入ってくる方々が多い。ファッショナブルだがきめきめじゃないこの方々は、ご近所にお勤めまたはお住まいのみなさんだと思うんだが、このカフェは突然湧いて来た我々も大丈夫だ。笑顔で歓迎、配慮してくれて、居場所を見つけやすくしてくれてる感じがある。富ヶ谷だが安心だ敷居は低いぞ。

ああ思い出すのは初来店。リトルナップっちゃあ、あーた、パイオニア、緊張の面持ちで入っていったもんだ。けど、そんなの全く必要ないかったさ。どんだけスタッフのみなさん優しいかわかりゃしないってほど、やさしく話しかけてくださってさ、すっかりリラックスさせてもらってさ、煮てさ、食ってさ、まぁ、こちらが自転車のおっさんで、界隈の横文字商売なシャレオツな客層と明らかに風態が違うんでいぶかしがった興味をもったってのもある思うけど、というより、何にも増して、このグアテマラが

「う、う、うまちょびれーっ!」

とテラス席で普通に叫んでしまうほどのデキだったので、

「お、お、お、おかわりくださうぇ!」

と血相変えて店内に再突入して来た私が、自転車ヘルメットつけたまま鼻毛伸ばしてふんがふんがしてたんで、むこうはなななんじゃこのおっさんとドン引きしたに違いないんだが、それでも、まあそれはそういう生命体だからって「仕方ないな枠」に入れていただいたみたいで、どうやらだいじょぶみたいです。

さてさて、もうひとつ。特筆すべきは音楽。店内の音響設備と、それらを使用してならす音楽、どちらも素晴らしい。プロい。音楽レーベルを運営されている方がオーナーさんの関係筋におられるせいでもあるらしいのだが、文字通りプロい。iPodにぶっこんであるプレイリストの妙、アナログレコードのツウな揃え、そして音響機材と、音楽にたいする深い深いリテラシーを感じざるを得ない。

パワーアンプなんかアルテックだぞ、おい。後にオーディオ機器メーカーJBLを創設することになる技術者ジム・ランシングが在籍し、半世紀前にプロ用機器で一斉を風靡したあのアルテックの真空管アンプがどーんと鎮座する。その見た目の堅牢さゆえ、プロバットの焙煎機や調整用工具類と違和感がなく、和やかなカフェと、筋肉質の焙煎所という相反するふたつの気分を橋渡しするような役目を担っている。自転車でやってきた半分運動着の私なんかにはとてもありがたいフックになっているよ。

スピーカーの方は、こちらは新し目のイノベーション、私もここで初めて見たんだけど、天井から吊るされたタグチの多面体スピーカー、指向性がなく、店全体を包み込むような鳴り方、それでいて小さくて邪魔にならない、ほんとうにこのお店でBGMを鳴らすだけのために作られたのではないかと思える優秀なスピーカー。

奥の方にもう一発ある低音をならすための別のスピーカーとあわせて素晴らしい音楽空間を作っている。しっかり音圧があって、黙って聞く分には最高の音質で、会話するときには邪魔にならないように引っ込んでくれるというBGMとしては理想的なあり方だ。うーん、プロい。参りました。

ところで、え?なに?二階がレコードストアになったの?土日限定?わお!なんかブルックリンみたいね。

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