原宿駅、渋谷駅、表参道駅、その3点を結んでできた三角形の中心からやや表参道駅寄り、こういう言い方しかできないような、言葉で非常に説明しづらい場所に在る CHOP COFFEE OMOTESANDOだが、その個性的な自家焙煎コーヒーは探してでも行って飲む価値がある。
最寄駅/地下鉄銀座線等 表参道駅 徒歩7分 副都心線 明治神宮前駅 徒歩9分
所在地/渋谷区神宮前5-44-12
電話/03-6437-5335
営業日/月〜金10:30~18:30 土祝11:00~18:00 日休
価格/ドリップコーヒー430円、おかわり100円引き
焙煎/自家焙煎
BGM/古めでポップなブリティッシュインディーズロックっぽい唄物(?)とか、まれにスティーリー・ダンとかドゥービーブラザーズとか
駐輪場/あり、ロードバイク対応スタンドも4箇所
トイレ/ウォシュレット有、スタッフの案内で、豆袋や缶をかき分け焙煎機の横を通ってたどり着くと、そこはコンクリートの個室、ある意味楽しい
その他/フリーWiFiあり、スタンプカード割引あり
https://www.chopcoffee.com/location
言っておくが、笑顔の素敵な優しい女性バリスタさんが何人も居るからって、通ってんじゃないんだぞ、ぞぞぞ、なんである。あくまでも目的はとても個性的で美味しいコーヒー、そうなのだ。それにしても大発見、発見という言葉は元々そこに存在してるお店に失礼なのだが、私にとっては、このコーヒーのうまさも、この隠されたロケーションの存在もまさに大発見だ。
「自家焙煎」というワードを地図上で検索して、初めて訪れたのが2月8日、なんと二号店のオープンするまさに前日だった。
表参道からちょっと南に入って、小さな角を何度も曲がるとその店は見えて来る。本当に静かな住宅街に、ひっそりと、実にひっそりと、白い小さなその姿を現わしている。どちらかというとフェミニンな色合いのシートで、ところどころ遠慮しがちに装飾された、まあ言っちまえば「かわいい」カフェなのだが、店前まで来るとロードバイク用の自転車立てが4箇所、それになぜか薪…。EXスポーツとかナチュラリストとかそういう空気感のある方々が運営しているのかもしれない。奥行きがありそうだ。
で、実際、そうだった。彼らのWEBサイトでそのあたりの趣向について言及しているので興味のある方はご覧あれ。加えて、みんな犬が大好きなんだって!
階段を上って入り口は中二階、おじゃまします&いらっしゃいませ。内装には切り出した木材が多用されてて店先での予感は本物になっていった。下の階のオシャレな仕事をしてるらしき事務所とは奥の階段で繋がっていて、出入り口は共有。まるでその会社の喫茶室に打ち合わせでおじゃましたような気持ちになる。
その日はコーヒーの選択肢が5つ、そのうち4つまでが深めの焙煎だった。
「これはもしかするとオーソドックスな日本の喫茶店的コーヒーを出す店かもな…」
その「深めオシ」のカフェに、ひねくれた一見さんで申し訳ないんだが、焙煎の浅いのエチオピアをお願いしてみることにした。待つこと数分。
「おっ」
いやいや、演出でなくマジで小声がでましたさ。すごくうまい。浅煎りの明るい酸味はもちろんあって、それに加えて深みの部分に他店にない個性がある。瞬間的に「味噌」だって思っちゃったんですけど、私の表現、突拍子なさすぎるんで多分全然違います。これ、豆類の味が感じられて、それが巡り巡って私の「味噌の思ひ出」を刺激しちゃった結果なんだが、発酵食品のような風味が感じられたのかもしれない。とにかく、本当に美味しいんでみなさんご自分でご確認ください…という投げやりなレポートで申し訳ないんである。
後日、地元のカフェでこの味噌の話したら、そこのバリスタさんに
「味噌ですかあ?まあわからないでもないですけどねえ」
とギリギリ救いの手も差し伸べてくれつつ大笑いされた。どんまい俺。
それから、ひと口めで「おっ」っと思えたのは一番コクが感じられる温度、すなわち、熱すぎない温度で出て来たせいなんだとも思う。後日飲んだもう少し煎りの深いもの、例えばコスタリカにしてもこの「豆」な感じがあったし。この味、他に例えるとしたらヨーグルトとかになるのかなあ。
このメッセージ性のある個性的な深い味わいによって、ファッション関係の会社が、流行りに乗って始めたオシャレなだけのカフェかもしれないないという疑惑は、182%で(と書いて「一発で」と読む)吹き飛んだ。
「こいつらマジだぜ」
私は頭を上げ、気持ちを引き締めなおして再度店内を見回した。すると、げっ、ギーセンじゃないのさ、あのでっかいロースター。私の知ってる範囲でギーセンはほとんど見かけない。フォルムがごつい、男っぽい、そして高価、男のこだわりだ。ある種のミスマッチだ。こりゃいよいよこの方達ナニモンなんだろうって気になってくるよね。焙煎は誰が?笑顔の素敵なやさしい女性バリスタさんたちが焙煎もしてるの?それとも有名な焙煎師さんでも雇ってるの?
ということで、尋ねてみたところ、笑顔の素敵なやさしい女性(くどい)バリスタさん曰く、
「ほら、あの人、いま、犬連れて階段降りてった男の人みえるでしょ、あの人オーナーなんですけどね、彼が焙煎してます」
しかも驚いたことには、その方、最初にカフェ初めて、次に階下を他の会社を貸したのではなく、彼自身が下の階のデザイン会社の社長さんで、カフェ経営は後から始めたんだそうで、そりゃもう、ワオ!なんである。社長さん、すげえぜ、こんなクオリティの焙煎もできちゃうのかあ。
会社経営の傍ら既存のカフェで修行する時間はなさそうだし、てことは独学なんだろう。二刀流。こりゃあコーヒー界の大谷翔平ですよ。しかも2店目も出しちゃったわけでしょ、必然的に大変に多忙になりますでしょ。昨日も焙煎に3時までかかったってことだし、そりゃどう考えてもゲキイソですよ。そこへもってきて、わんこが毎日「早く散歩つれてけ~」って待ってるわけだし、ほんとに大変でしょう、お察し申し上げます。

下の階ではこんなデザイン仕事をしているよっていう付箋のある本
なんて感心していると、笑顔が素敵でやさしい女性(大事なことだからな)バリスタさんが
「ちょっとこれからコーヒー屋とは思えない匂いになっちゃうんですけど、すいません」
っておっしゃるから何かと思ったらチャイの仕込みが始まってた。カルダモン?フェネル?など、スパイスのいい匂いが充満して来る。ちょっと待てよ、このオリエンタルなアロマ、この店で焙煎されたコーヒーの味に通底するものがあるなあ、う〜む、考えすぎかな。
それにしてもチャイ4リットル仕込みですってよ。私も大昔カレー屋でバイトしてたときチャイ大量仕込み経験があるんだが、新鮮なスパイスで仕込む自家製のチャイは美味しいものなんである。後日飲んでみたけれど、やっぱり予想通り濃厚、うまかった。
キャットストリートにある二号店にはドリップコーヒーはやらない。そのかわり、エスプレッソ系各種とこのチャイがある。二号店もまた、確かにキャットストリートだが、ひとひねりした裏道に在って、私ら原宿に疎い人々がたどり着く為には、また宝探しのような探検を経ることになるだろう。

二号店/CHOP COFFEE CAT STREET
てなわけで、チョップさん、知れば知るほど一筋縄ではない、いろんなとこにひねりのあるカフェなんである。こりゃまだまだなんかありそうだ。