
最寄駅/京王井の頭線 神泉駅 徒歩3分
所在地/渋谷区神泉町13-13ヒルズ渋谷1F
電話/03-6416-3138
営業日/火〜金9:00~21:00 土日11:00~17:00 月休
価格/エスプレッソ350円 ドリップ450円〜
焙煎/自家焙煎
BGM/アナログレコードをJBL4312スピーカで、CS&N的な70年代ロックからバップ期やモード期のジャズまで、迫力のある音
駐輪場/なし、店前の柵に立てかけて2台くらい
トイレ/ウォシュレット有、客席奥にあり普通に入りやすい
その他/コーヒー豆200g購入で中古アナログレコード一枚プレゼント!
http://heartslightcoffee.com/
その少年は、まさか自分が優勝することになるとは思っていなかっただろう。ラジコンカーレース、勝つには高い操縦技術だけでなく、緻密なセッティング技術を求められる。
「その頃からモーター周りをいじるのは得意だったんですよ」
元タミヤグランプリ優勝者、子供の頃の唯一の自慢話だと笑いながら話してくれた彼は、いまはハーツライトコーヒーのカウンターに立っている。そして今だにモーターをいじっている。タミヤだマブチだあーだこーだやっておる。お好きなんですね、わかりますよ、私もそうだし、男ってやつぁいつまでたっても…ってやつなんである。
「今のモーターに色々問題があるんで、これに取り替えます、それに…」
見せてくれたのはタミヤのモーター。スピード、回転数をもっと微妙に変化させられるようにするとか、耐久性をよくするとか色々な点を改善したいらしい。
さて、カウンター上に黒い筐体を4つ並べているのはコーヒードリッパーである。実はラジコンカーの話はここでおしまい、もう出てこないんである。なのになんでまだモーターいじってるかっていうと、ここからが、あーた、お立ち会いって話になるんだけど、このドリッパー、なんと電気で動く。フィルター部が回転するのだ。
カフェでよく見るハリオのV60を乗っけた台座がグルグル回る。従って、お湯を落とす側の人間様はヤカンで円を描く動作から解放され、ほぼ腕を固定していればよい。その代わり、コーヒーパウダーの入ったフィルターが回転してくれるって仕組みになっている。
「こうすることでどのバリスタが淹れても味が安定するんですよ」
なるほど、おそるべし、よく思いついたなあ。というより、思いついても実現できないよね、普通。当然、各方面から驚愕の声が。
「40年この仕事してますけどこんなの初めてみましたねえ(笑)」(ハリオの営業さん)
「なんてこった!これだから日本人は油断できねえんだよ」(ニュージーランドからの観光客)
それに、ドリッパーを回転させて初めて得られる効果もある。遠心力だ。中心部に注いだお湯は遠心力によって外周方向へと広がっていく。目視できない水の対流を主体的にコントロールすることで、抽出されるコーヒーの質を向上させよういうのだ。
回転スピードは四段階切り替え可能。コーヒー豆は焙煎の深さによってガスの含有量が違うため、抽出時の膨らみ方が異なる。そのため、回転スピード、すなわち遠心力のかかり方を調節し、膨張率の変化に対処するのだ。いま、このスピード変化を、さらに細かく、シームレスにできないか検討中で、それ故に、抵抗があーだの、コンデンサがこーだのと回路の話をやっている。

さりげなくタミヤのシールが貼ってあるんだよね
えーと、そういえばこのサイトはカフェとコーヒーのブログでしたね。電気屋の日記じゃないんである。そうはいっても私ゃこういう男子校ノリが大好きでやんして、だって物理研究部の部活のみたいなんだもん。ここ、ハーツライトのバリスタ且つ運営者の皆さんは3名、全員男子、愛すべきカフェ野郎たちである。この雰囲気が男子校出身の私にとって居心地良いのだ。
誤解のないよう申し上げると、ここはクリエイティブなエクステリアに、オーガニックなインテリア、女性客にも人気のサードウェーブ系ロースタリーカフェで、私以外のお客様方はみなファショナブルなんだぞ。
あくまで、「なのに」っていう話。オシャレカフェ「なのに」ちょっと仲良くなって話すと男子校マインドが見え隠れするってとこに、私が勝手に面白みを感じているだけだ。諸君におかれましては、賢くも主従を逆転しないようにお願いしたい。
それにしてもだ。壁にかかったアナログレコードのジャケがなぜ敢えてジェフベックなのか。この辺が男子向けフックなんだよね。

日本に一台!銅板で覆われたトルコ製焙煎機
そんなこだわりのカフェ野郎たちが、焙煎してブリューするコーヒーだから、美味くないわけがない。聞けばブレンドの焙煎からしてこだわっている。
「焙煎したものをブレンドするのではなく、生豆を混ぜてから焙煎します。その方が味が混ざるんですよ」
うわ、これは難易度高いだろう。他にも、改造した(!)エスプレッソマシン用の豆はエスプレッソマシン専用にしてドリップコーヒーには使わないとか、200gの豆を買ったお客さんにも100gずつ小分けにして届けるとか、とりのぞいた欠陥豆も面白がってもらうように(?)別途付けてくれるとか、コーヒー愛とこだわりに溢れている。
この愛とこだわりってやつが溢れると、面白いネタも尽きずに後から後から溢れてくるものだ。色々あるんだけどもう書ききれないんである。またの機会に「つづく」とさせていただきたい。それではみなさま、お楽しみにね、なんである。
では最後に、コーヒー愛とこだわりに溢れていない、逆の例をひとつお話して、御機嫌よう。
オープン直前の大手商業施設から、ハーツライトに、豆を卸してくれないかというオファーがあった。だが、しばらくしてその件は白紙になってしまった。理由?個人事業主とは取引できないんだってさ。社内規定なんだろう。んで、結局どこの豆になったかというと、関西某大手企業の大量生産ものだった。なんだ、なんでもよかったんじゃん。コーヒーへの愛もこだわりも特になかったんである。都心の良い立地で、感度の高い消費者に提案、訴求する良い機会だったのに、みすみす放棄してしまってもったいないなって私は思う。だけどね、逆に見れば、大企業がそういう企業文化だから、小さな宝石達が光を放ち続けられるんだろうとも思う。

タミヤでもマブチでもなく、正月の休業日に来てしまい「やってもーたー」搭載の筆者、または駄洒落に身体を張る男